274 / 322

第274話

結局、俺は昼休憩が終わる直前まで中黒の膝枕で安静に過ごし、涼真と直接話をする事は出来なかった。 「あ〜あ、どうするかな…」 山城さんが…美織が何でそんな行動に出たのか考えるのも嫌なのに…そんな俺と話をするとかふざけてんだろが。 ただ、強く言うのを躊躇う自分がいる。 それはきっと子供を亡くしたと聞いてしまったから。 「とりあえず涼真にメール…」 休憩終了を知らせるチャイムが鳴る前に…慌ててポケットに手を突っ込んで携帯を握った。 静かな室内に響くのはキーボードを叩く小さな音と紙を捲る音だけ。 仕事は順調に進み今日は溜めていた付帯業務も片付けられそうだ。 それが顔に出たのか、目の合った佐藤リーダーが俺を見てニンマリと微笑む。 「香束、明日の会議用の資料の補足分纏めておいて」 「え?」 俺、山城さんに呼び出されてるんだけど…なんて言えない…。 目だけ横に動かして山城さんを盗み見たが表情に一切変化なし。 「香束、聞いてた?」 「あ、ハイ…」 「そんなに大した量じゃないよ」 佐藤リーダーが ハハ、っと笑ってファイルを送ってきた。 ファイルを開けて薄目でチラリ。 ホッ…そんなに多くない。 これならササッとやっつけて呼び出された体育館裏(会議室)へ行けるだろう。

ともだちにシェアしよう!