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第277話

「お前がストーキングしてるって日本にまで連絡があった」 「嘘……」 美織は言いかけてぐっと唇を噛み、泣きそうな目で涼真と俺を睨む。 「もっとも、相談の主はその途中で子供と事故に会って今は天国にいるけど」 美織が好意を寄せていた相手の妻子が亡くなって、そこに収まりたいっていう事か。 でもそこに真咲は必要ない。 「お前は優秀なんだから男の一人や二人、落とせるだろ?」 「そうじゃないわ!」 涼真の言葉に再び美織の怒りのボルテージが上がったようで、美織はヒールで床を踏み鳴らした。 「あなた達、子供を亡くすのがどんなに辛いかなんて理解できないでしょ?もう、毎日が地獄よ!いつでも、どこでも、誰に会っても、辛いでしょ、可哀想ねって、分かった風な口調で蔑まれる…」 「……」 「だから、私は子供を連れて彼と結婚したいのよ!子供がいれば二度と言われない!」 「世間体の為に真咲が欲しいのか?」 「聞いたの。…あの子、優秀なんですってね」 美織の態度が一変した。 「優秀な両親に優秀な子供。ほら、あなた達二人よりよっぽど幸せな環境じゃない。これなら周りから指をさされる事もないでしょ?」 それは、…俺が恐れている事。 だが、涼真は怯まない。 「はぁ?指なんかされた事ないし、一生そんな目に合わせない」 「じゃあ、私が事実を広めてあげる。男二人の不毛なカップルが子供を毒牙に掛けようとしてまーす、って!」 「止めろ!美織!」 涼真を追い詰めないでくれ! 「周りから白い目で見られて可哀想〜!はは!」 「止めてくれ!」 スカートをひらひらさせて、美織が楽しそうに回り出す。 「ほら〜、私が引き取ってあげればそんな目にあわないのよ?分かった?」 「…分かってないのは山城さんだよ」 突然の声に、美織の視線がドアを凝視した。

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