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第280話

「いつからって…プロポーズはバッチリ見たぜ」 「ひぇぇ!」 中黒は顎に手を当ててドヤ顔でこちらを見ている…。 …だが何故ドヤ顔? 違う違う!俺と涼真の秘密が同期とはいえ、会社の人間にバレたんだ! マズイ! そう思った途端に身体中の汗腺から大量の水が吹き出してきた。 背中を流れ落ちる汗がワイシャツを濡らし気持ち悪い。 「中黒、何でここにいんの?」 全身で動揺している俺とは対照的に、涼真は冷静に突っ込みをしていた。 俺を庇うように、一歩前に出て。 「いや、ま、その…アレだ。そう!様子を見に来たんだ」 …今、シドロモドロだったよね? 「…ありがとう、中黒。それで、中黒は祝福してくれるの?」 「りょ、涼真!」 いくら同期とはいえ、ストレート過ぎないか? 後ろでアワアワしている俺を見透かしたように、涼真はチラッと振り向いて笑った。 俺達の関係…について涼真は公言してもいいって言ってたから…構わないのか。 「俺はな…とっくの昔に祝福してるって」 ……!中黒ーー!もしかして… 「…知って…るとか?」 申し訳なさそうに頷く涼真。 「…何だよ…先に言ってよ…」 「ゴメン…」 「それは…俺が無理に聞いたからで、東藤は悪くない」 は?涼真と中黒の親密度高いんですけど! 「何だよ二人とも…。知らないの俺だけじゃん…」 「言うタイミングが…無くて、さ」 そうさらりと涼真が言う。 チェッ…。 ホッとしたような、寂しいような、その時はそんな風に思った。

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