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第286話

残業になれば少しでも優羽の所へ行くのが遅くなるよな… …そう思ったりしてみたが…俺の心中とは裏腹に、仕事の進捗はめっっちゃ順調…! 「今日は皆定時で帰れるな!」 「……そうですね」 「うわ…中野冷たい」 「返事してんだから冷たくは無いです」 「言い方…」 ま〜だ空気がおかしい佐藤リーダーと中野さん。 「あの、ちょっと郵務に行ってきます…」 「いってら」 ひらひらと手を振る佐藤さんだが、時間まであともうちょっとなんだけど空気感に耐えられず少し社内を歩いて気を紛らわそう、そう思って俺は席を離れた。 階段をトコトコと一階まで下り、守衛さん達が詰める部屋の隣に入って鍵付きのロッカーへと封筒をダイブさせた。 「まだ戻りたくねぇな」 辺りをキョロキョロと見回して付近に知ってる顔が無いのを確認してからフロアの奥へと進んで行った。 途中自販機でコーヒーを買い、さらに奥へと進むとちょっとした休憩スペースがあり、俺は壁際に置かれたソファにドカッと座った。 「ラッキー。今日は人がいないや」 資料の受け渡しだけなんかの用事で来る部外者と面談したりする時に利用する事が多いから誰かいると気まづいが、幸い俺一人。 缶コーヒーの栓を開けて、冷たいコーヒーを一気飲みした。 「美味!いつものと違うけどこれもいいな」 フーっと息を吐き出して、あんまり長居するとサボってんのがバレるからもう戻ろう。 来た道を引き返して階段を登った。 「…お帰り…」 「えーっと…今戻りました…」 ちょっと時間が空いた位じゃ変わらないのか。 さっきよりもっと微妙な空気感になっていて、なんだか一段と居心地が悪い。 でも、ま、いっか。 そろそろ終業のチャイムが鳴る。 その音を聞いたら“ 失礼します ”と言って会社を出てしまおう。

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