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第288話

「涼真から大切な話があるからって言われたんだけど、郁弥…どういう事か説明して」 優羽の部屋に通されフカフカのカーペットに涼真と並んで足を折って座ったのだが…ん?言葉の端がキツくねぇか? だが、意を決して言わねばならない。 目の前で椅子に腰掛けてこっちを見下ろしている優羽に。 「姉ちゃんに、言っておかないといけない事があるんだ」 「…そう。何かしら」 普段の医者としての優羽とは全く違う、俺の姉の優羽。 「実は…俺達…その…」 身内に…親よりはハードルが低いとはいえ、緊張して額から汗が落ちた。 「変な事言ったら許さないわよ?」 「えッ!」 早々と牽制してくる…何…?もしかして…反対されてる?? 「その…俺達…今まで一緒に生活してきたけど…その…そろそろ…ハッキリさせようと思って…」 「どういう事なの、郁弥」 「ま…まず姉ちゃんの許可が欲しいんだ」 そう言うと優羽の表情が崩れ、目から大粒の涙が零れた。 「うわ!泣いてる…?」 「別れる許可なら…出さないわよ」 …ん? 別れる? 誰が?? 「何言って…」 「だから、二人が別れるなんて、…私許さないから!」 「へ?」 「別れませんよ、優羽さん」 「…!だって…改まって話があるとか…目の前で正座とかするから…てっきり別れ話だと思うじゃない!」 「…そそっかしい…」 「郁弥、…聞こえてるわよ」 わ、怖…。 「俺と郁弥がそういう関係だって…認めて欲しくて来たんです」 「な〜んだ、その事なの。知ってるから大丈夫よ」 すぐに涙を引っ込めて、優羽はしれっと宣ったが…バレてた? 「…いつから?」 「二人で住める部屋、紹介したでしょ?」 俺達が秘密にしていたこの関係を…十ン年前から姉が握っていたとは…。 驚いて…俺は暫し言葉を失った。

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