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第298話

「ずっと…諦めてたんだ…」 だから真咲を引き取ったのだと涼真は言った。 「そうしたら…さ、少しは誰かの役に立てる…違うな。…一人で生きていくのが怖かったから…かも」 「随分と寂しい事言うんだな」 「…うん。だって…」 言いかけて唇を指でなぞり、涼真は黙ってしまった。 同じベッドに入っても体を繋げても…涼真の心全てを読み取れない。 …苦しみも、悲しみも。 自分を偽って生きていくのは辛い。 けれど正直に言ってしまっても上手くいかなければもっと苦しい生き方になる。 目の前に並んで横たわる人の髪を撫で、瞳を覗いた。 「俺は…涼真の全部を受け止めたい」 「…ありがと、郁弥」 小さく笑う涼真。 「しかし優羽が…俺達の事…随分前から知ってて…ビックリだった」 髪を撫でる手を涼真が優しく止めてキュッと握る。 「咲百合も…多分気づいてた…」 「咲百合が?」 「うん」 そうか、咲百合もか。 「だから…手紙を送って寄越したのか…」 「…手紙?」 「ああ。涼真を助けて欲しいって」 「…俺を…?」 あの手紙をが無ければ俺は日本に帰って来なかったかもしれない。 あの手紙を読まなければ涼真に会いに行こうなんて思わなかったかもしれない。 「咲百合の手紙…読む?」 「…うん」 俺は体を起こし涼真の背中側の壁…本棚に手を伸ばした。 そこから一冊のアルバムを取り出して中を開くと少し色がぼやけた封筒が現れた。 「これだよ」 「…これ…」 涼真はアルバムに挟んであった封筒を手に取ってその中から恐る恐る便箋を取り出した。

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