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第301話

「はぁーお腹いっぱい。ご馳走様でした」 ポンポンとお腹を叩く仕草をして、真咲は一つ伸びをした。 それから椅子に座り直して姿勢を正してから俺と涼真の顔を交互に見て改まった口調で話し始めた。 「父さん、とと、僕の為にありがとう。感謝してもし切れない」 「真咲…」 「いいんだ。俺も涼真もやりたくてやってんだから」 「…うん。それでね、お願いがあるの。聞いてくれる?」 …お願いって…今までこんな風に言ってきたのは過去に二度しかない。 一度目は私立高校、二度目はその付属大学に進学したいと言った時。 「言ってごらん、真咲」 「あのね、…家を出たいんだ」 「…どうして?」 「…僕ね、自分を試してみたい。ちゃんと出来るのかどうか」 俺は真咲の言葉にショックを受けた。 だってさ、まだ二十歳なんだぜ? 自立すんの早すぎねぇか? 狼狽える俺とは逆に、涼真は至って冷静だ。 「そうか…」 …え! 「涼真!」 いいの?いいのかよ! 「いつ?」 「新学期が始まるまでに」 「分かった」 …! 「ちょ…ちょっと、涼真!そんなに簡単に決めていいのか!」 「…いいんだ。もう子どもじゃない…これからは自分の生き方は自分で決めればいい」 突き放すような、認めるような…どちらにでも受け取れる言葉。 俺は…こんなに大切な事をあっさりと許す涼真の事が心配でならなかった。

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