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第303話
「ふぁ〜…ねみぃ…」
まだ夜が明けきらない…早朝と呼ぶのもはばかるこの時間、俺は眠いのに眠れなくて…仕方なくベッドから体を起こした。
「あ〜…やだな…」
どちらかと言えばポジティブシンキングな俺。
だけど今日という日は気が重い。
「真咲…家を出るのか…」
布団を掛けたまま体育座りをして膝に頭を乗せた。
一生帰ってこない訳じゃないし、涼真と親子の縁を切った訳でもない。
ただ、子供が親元を離れて独り立ちするだけ。
親戚のオジサンポジの俺が寂しいなんて、越権行為もいい所。
そんなのは涼真にだけ許された権利なんだ。
「しっかりしろ!俺!」
俺が沈んでたら真咲だって家を出にくいだろ!
俺は両手で軽く頬を張って、鼻から勢いよく息を吐き出しベッドを降りた。
「おはよ、郁弥」
「涼真、おはよ」
朝食を作り始めると、いつもより早い時間に涼真が起き出してきた。
まだ眠そうな涼真は目が開ききっていないようだ。
「今日は早いな」
「いつも早いって」
嘘つくな。
休日は朝食が出来上がる頃に起きてくるだろ?
涼真も俺と同じで眠れない夜を過ごしたのか、よく見れば目の周りには隈が出来ていた。
「せっかくだからさ、涼真が卵とウィンナー焼いてくれよ」
「何でだよ、郁弥の方が上手いだろ?」
「きっと真咲が喜ぶから、さ」
そう言うと、そうかな…なんて呟いて、涼真はいそいそとフライパンを手に握った。
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