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第309話
「じゃあさ、たまには俺が郁弥のコト甘やかしてやるからさ、何でも言ってみてよ」
いつもより、格段に機嫌のいい涼真は太っ腹な事を言い出した。
…何でも?言っちゃうよ、俺。
「本当にいいの?」
「男に二言は無い!」
「じゃあ…」
俺は涼真のパジャマの胸ぐらを引き寄せて、囁くように要求を伝えた。
「え?今それ?」
「…ダメ…かな?」
下唇を噛み、暫しのお悩みタイム。
「…他は?」
「…いいって言ったじゃん」
「ぐぬぅ…」
さらに眉間に皺が追加され、まだまだお悩みタイム…。
「もうちょっとハードル下げて…」
「男に二言は…無いんじゃないの?」
額に拳をあてて、さらなるお悩みタイム…。
そんなに悩ましいなら断っていいのにな、なーんて俺は軽くかんがえていた。
「負けた!用意するから五分ちょうだい」
涼真は意を決したようにそう言い、頬を若干染めて俺を見つめる。
「了解。見てていい?」
「…それはヤだ。後ろ向け」
「は〜い」
俺は本棚の方を向き、涼真に背を向けた形で布団を被った。
ベッドから降りる涼真を背中越しに感じて、俺は緩む顔を抑えきれない。
むふふ。
どさくさに紛れて言ってみるもんだ。
俺はドキドキしながら布団の中で心拍数を上げた。
いや、だってさ…前から見てみたいって思ってて…つい口から出ちゃったんだ。
やべ…考えただけで反応してきた…。
鎮まれ、まだ早いと心で念じていたらベッドに涼真が乗る気配。
…来た!
「ほら…いいよ。見て?」
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