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第25話

「目、覚めた?」 逢坂がふふふと声を漏らして笑うのを、柴田は何故か部屋にひとつずつついているお風呂のふたの上に座って聞いていた。部屋についているお風呂もヒノキで作られており、ヒノキの香りが辺りには立ち込めている。ここの旅館の最大の売りである温泉は、勿論それはそれで良かったけれど、部屋のお風呂も悪くはない、柴田はくるりと見渡して考えていた。 「はぁ最悪、いい気分で寝てたのに」 「まぁまぁ、折角来たんだからこっちのお風呂も楽しもうよ」 「本来の用途以外で使うな、馬鹿」 「だって汚さない方法、これくらいしか思いつかないもん」 「それに浴衣はいいのかよ、もう」 「だって侑史くんが汚れる濡れるって言うから、浴衣プレイはまた帰ってからしよ」 「しねぇよ、馬鹿か」 はは、と柴田が肩をひくつかせて笑って、まだ少しだけ眠たい目を擦る。逢坂は座っている柴田の足元に膝を突くと、柴田の足を開かせて、それを全く躊躇ない動作で咥える。びくりと太ももの内側の筋肉が震えて、逢坂にも振動を伝える。 「オイ、いきなり、かよ、お前・・・」 「あ、ごめん、ちゅーする?」 「その口ですんな、気持ち悪い」 「ひどい、侑史くんケッペキなんだって、俺のだって全然舐めてくれないし」 「あー、もう絶対無理、むりむり、死ぬ」 「ひどい、泣いちゃう」 逢坂が俯いて泣き真似をすると、肩を足でどんと突かれる。思わず顔を上げると、柴田がまだ眠たい目のままこちらを見ている。どうでもいいけれど足で突くのはいかがなものかと思って、柴田の無防備に晒された足首を捕まえるとまた体がびくりと跳ねる。 「するならはやくしろよ、寝たいから」 「侑史くん、ムードがないね・・・」 「ムードなんているの?」 肩を揺らしてまた柴田が笑った。捕まえた足首をべろりと舐めると、掴んだところからびくびくと震えて、こんなところもいいのかと逢坂はひとりで思う。逢坂は柴田の痩せて細い足首や手首が好きだった。ちらりと視線を上げると、何か言いたそうな柴田の目とぶつかる。 「・・・お前そうやって変なとこ、ばっか」 「侑史くんが変なとこばっか感じるのが悪いんだよ」 「感じてねぇわ、別に」 ふうと息を吹きかけると、またあからさまにびくびくっとするので、柴田のそれが照れ隠しであることくらい逢坂にはすぐに分かる。閉じた膝をもう一度開かせて逢坂が性器を口に含むと、柴田の手の指がヒノキの風呂のフタに食い込んでぎちりと音を立てた。 「んっ、はぁ、あっ」 手を使いながら奥からゆっくり丁寧に舐めると、それが段々体積を増やして形を変えていく。下から柴田の様子を見上げると、赤い顔を俯かせて唇を半開きにさせてそこから声が時々漏れている。ふと視線が絡んで、柴田の眉がきゅっと上がった。 「なに、見て、んだよ」 「ごめん、感じてる侑史くんかわいいから、つい」 「ついじゃねぇよ、見るな」 見るなと言われてもなかなかそれは難しい要求だ、逢坂は考えながら、また手の動きを再開させて先走りを零しはじめる柴田のそれを口に含んだ。じゅるっと音を立てて吸うと、内ももの筋肉が震える。柴田は思わずヒノキのふたから手を剥がして、右手で口を塞いだ。 「ふっ・・・うっ・・・」 「侑史くん舐められるより、吸われる方が好き?こっちのがきもちい?」 「うっ・・・んん・・・」 「なに、分かんない。手、外してよ」 下から引っ張ろうとすると、柴田は若干目の表面を濡らしたまま、体を捻って抵抗した。 「えー、なんだよー、侑史くんが良い方してあげるって言ってるのに」 どん、とまた肩を蹴られて、逢坂は苦笑いを浮かべた。 「はいはい、はやく、ね」 「ちがう!」 それだけは手を外してはっきり言うと、また柴田は手のひらで口を覆った。それにも文句を言いたかったが、こんなやりとりをしていては一向に進まないので、逢坂はそれは聞かなかったことにして、またフェラチオを再開させた。柴田は自分で塞いだ器官のせいで、逢坂の頭上で苦しそうな息を繰り返している。こんなところで誰かに声を聞かれるわけでもないのに、我慢する必要があるのかと逢坂は不思議に思う。柴田のそれがずるずると液体を零しはじめて、根元をきつく吸って先端に軽く爪を立てるとまたどんと肩を蹴られた。 「なに、イきそう?」 口を押えたまま、柴田がこくりと頷く。珍しく素直だ。考えながら下唇についた先走りをべろりと舐めて、逢坂は掴んでいた柴田の性器をそのまま上下に抜いた。 「やっ・・・っし、ず・・・ぁっ」 「侑史くん出して、飲んだげるから」 「やっ、あっ、はぁ、う、うう、っん」 途中から思い出したように口を塞いで、最後はくぐもった声しか聞こえなくなる。手を止めてまた口に含むと、それが引き金になったのか、柴田は体を折り畳むようにして逢坂の口の中に射精した。ごくりとそれを喉を鳴らして飲み込むと、柴田が眉間に皺を寄せて信じられないみたいな顔をする。何回同じことを繰り返しても、やっぱり毎回同じように柴田は眉間に皺を寄せており、慣れる気配がない。 「はぁ・・・っあ・・・」 「侑史くんいつもより感じやすいね、どうしたの」 「ん、別に・・・いつも、どおりだろ・・・」 「そう?」 キスをしたかったけれど、そのまま唇に触れると怒られると思ったので、逢坂は立ち上がると、柴田のうなじに張り付いた毛を丁寧に取って首筋にキスをする。柴田が体を捩って、何か言いたそうに唇を開いて、そして何かを思案するみたいに唇を閉じる。

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