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第6話

明吏side 僕と、好くんが出会ったのは大学の授業。本当なら学年が違うし、出会うことはなかったんだと思う。 前の席に座るのはなんとなく嫌で、後ろの方の席によく座っていた。その日も、早めに着いて席を取り、教科書を開いてペラペラと、読むこともせず…。ただ時間を潰していた。 「…そのスピードで読めるの?」 「っ!?…いえ、別に。…読んでは無いけど暇だから」 「だよね。安心した…。あんまりにも早いから、凄い一年が入学して来たのかと…」 自分だって一年でしょ。なんて、心の中で思っただけのつもりだったけど、どうやら顔に出ていた見たいで、ケラケラと笑われた… 「今、僕も一年のくせにって思った?…あははっ、僕ね。二年なの。去年面倒でサボってたら単位落としちゃって…」 「…それ、笑って言うことじゃないんじゃ、…ない、ですか…?」 「嗚呼、無理に敬語じゃなくていいよ?」 「なら、お言葉に甘えて。で、単位の取り直しでもう一回ってこと?…ならこれってわかるの?」 「あー、これか。これは…」 なんて、分からなかった前回の講義のところを聞けばわかりやすく解説してくれた。今思えば、かなり無礼だよなぁ…。 それに、好くんも何を思って僕に話しかけてきたのか。時間が早く人がまばらだったはずで、好きな席に座れたわけだ。わざわざ僕に声をかける必要はなかったと思うんだけど…。 分からなかった問題が分かったあたりで、先生が入ってきて授業が始まった。そう言えば、名前聞いてないし、お礼も言ってないや。隣に座って授業受けてるし、終わってから声をかけてみよう。 「ありがと、先輩。さっきの分かりやすかった」 授業が終わった後、スッと立ち去ろうとした先輩の服の裾を掴んで声をかける。少し驚いた表情は、ちょっと面白い。 「そお?なら、良かった」 「「ねぇ、名前…」」 名前も聞いておこうと話しかけると、相手も同じことを聞いてきて思わず笑ってしまう。 先輩も、クスクスと楽しそうに笑ってて…。 笑い方、可愛いな。控えめなのにとても楽しそうなのがよく伝わってくる。 「…ふふっ、被るとは思わなかった。僕は、李 皓丽(リ・ハオリィ)。好(ハオ)って呼んでよ。君の名前は?」 「僕は明吏(メイリ)。入夏 明吏(いるか めいり)。呼びやすい呼び方でいいよ」 日本語、少し訛ってるとは思っていたけど…。中国の出身なのかな…?生憎、事故の後遺症で、顔がはっきり分からず覚えにくいけど…。彼の真っ赤な長髪はよく目立つ。 覚えやすくていいなぁと、ちょっと失礼かな。そんなことを思ってじっと見つめてしまった…

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