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第35話
明吏side
呼吸が整ってくると、ゆっくりと意識が覚醒する。何か話しかけられた気がするけど、よく覚えてない…。ぼんやりと、揺れる視界から見た好くんは、死にそうな顔をしているように見えて…。思わず抱きついた。
そんな僕を慰めるように頭を撫でる手はとても優しくて自然と涙が溢れそうになる…。バレないようにと、彼をきつく抱き締めた。
「好くん、ありがと…。落ち着いた」
「そ?なら良かった。…帰ろか」
「うん…」
無言が心地いい…。惚れた理由はそれだったと思う。でも今は、その静寂が寂しい……
静寂に耐えられず、手を取る。何故か分からないけど、手を繋いでいないと好くんが消えてしまいそうで怖かった。酷く怖かった……。
このまま好くんと別れたら会えなくなる気がして寄り道して帰ろうと、手を引いた…
慣れた帰り道。僕の家の近くにある公園。
手を繋いだままベンチに座った。夕暮れの赤い空は、少し火照った僕の頬を隠してくれる。
「日曜日、楽しみだね」
「うん。美術館初めて行くかも」
「そうなの?楽しめると良いけど…」
「楽しめるよ。だって好くんと一緒だもん」
「そんな可愛いことと言わないで?」
少し困ったように眉を下げて、ふにゃっと笑ったその顔が…。とても儚く綺麗で…。夕焼けも僕の頬にさす朱を隠してはくれなかった…。
照れて、声の出ない僕を、見逃してはくれない逃げられないよう頬に手を置かれて、少し熱い唇が優しく重なる…。
何度か啄むように重なる…。吐息が、期待が、唇を震わすから、そっと口を開いた。好くんの舌が僕の気持ちいいところを刺激して、酸欠で頭がぼんやりする…
「…ん、…ちゃんと、……呼吸して?」
「はぁ…はぁ…んっぁ…あっ……はふっ…ん」
「ん、上手…」
頭から耳を優しく撫で下ろし、首筋をスーと通る指にビクッと身体が跳ねた…。繋がれた手がいつの間にか解かれて、キスの苦しさに逃げそうになった僕の耳を塞いだ。
塞がれた事で、頭の中にえっちな音が響く…。
逃げられない甘い快楽に…、ただ酔いしれた…
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