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第7話 俺、出会いました1
目が覚めるとそこはカーテンに囲まれたベッドの上だった。場所を確認する間もなくシャッと音を立てカーテンが開いた。
「あ、お目覚めになられたんですね。良かった」
そこには女の人がいた。服装からして看護師さんだと分かった。
(病院だ、、、)
「念の為検査がありますので診察室に来ていただけますか?」
「あ、はい。」
俺はベッドから降りると同時にびっくりした。あんなにだるかった体が驚くほど軽くなっていたからだ。
………………
診察室に行くと様々な質問をされ、それに答えるのの繰り返し。
担当の先生は女性で少し恥ずかしかったが俺がオメガってこともありその先生もオメガ。話しやすくはあった。
「単刀直入に言うと、佐々木くんの症状は発情期が始まったことによるものね。」
「発情期、、、」
今まで経験したことが無いものに対する不安は大きかった。
「一般的なオメガなら高校入学位までに来るものだから君の場合少し遅いね。そのせいで今後重い症状が出るかも。」
「はぁ、、」
(この前経験したのはまだまだ序の口ってことか、、。)
「一般的な発情期は抑制剤で軽くなることが多いのだけれど、佐々木くんの場合数ヶ月間はあまり効かないかもしれないわ。あと、個人差もあるし。」
「え、、?」
「今回のヒートはすごく突発的なものだったからまだ体が追いつけていないの。あ、ひとつ聞きたいんだけどいいかしら?突発的なヒートには何かしらの原因があるの。心当たりはない?」
(え、、原因?原因って言われても、、あっ、、)
俺は橋倉さんのことを思い出していた。
(そういえば、あの料亭で嗅いだ橋倉さんの匂いで頭がぼーっとしたんだ。それからあの匂いに惹かれていって、、、今回ヒートになった時も橋倉さんこと考えてたからで、)
そんなことが原因になるのか?と思いつつも俺はここ数日間のことを先生に話した。
「あ、あの、、、3日前ある人とお見合いをしたんですけど、その時その人の匂いで頭がぼーっとして倒れてしまって一日寝込んでて、、、。それで昨日病院に行こうとした時にその人ととたまたまあって、匂いに惹かれちゃって、、、そしたら急に体の力が抜けて....俺、、もう何が何だかわかんなくなって...っ」
俺は発情期の影響からかは分からないけれど情緒不安定になっていたらしく何故か泣いていた。
「大丈夫よ。落ち着いて。」
先生はそう言って俺の背中をさすってくれた。
「...っすみません。」
「これは私の推測なんだけれど...その人は佐々木くんの運命の番なのかもしれないわ。」
(え....運命の番って都市伝説なんじゃ、、)
俺は戸惑った。だって運命の番って、、そんなのおとぎ話だとしか思っていなかったんだから。
「運命の番って都市伝説なんじゃないんですか、、、?」
「科学的根拠は無いのだけれど、確かに存在するものよ。佐々木くん、さっき匂いに惹かれたって言ったわよね?」
「はい。」
「運命の番はね、互いにその存在に無条件で惹かれ合うの。"本能のままの動物のようだ"なんて言う人もいるけれど私ははそうは思わない。たった1人の運命の相手に出会えることはきっと幸福なことよ。」
「お相手の方とも今後のことはよく話し合った方がいいわ。」
(運命の番、、、?俺と橋倉さんが、、、?)
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