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第13話 side哉斗1
2週間前オメガの大学生と縁談をした。
俺は俗に言う御曹司ってやつででそういう話は親父 からよく来る。だが、いつも断っていた。
親父とは馬が合わない。不仲という訳ではないが極力関わらない。面倒臭いからだ。
そんな親父からの見合い話なんて受けるはずもなかった。俺がなぜこの縁談をうけたかと言うと、昭仁 さん(俺のじいさん)からの話だったからだ。
どうやら相手の大学生は昭仁さんの旧友の方の孫らしく、偉く奨めてきた。
昭仁さんのことは尊敬しているし、仕事を教えてもらったりと恩があるので断るには少し気が引けた。
当日、仕事が片付かず約束の時間に遅れてしまった俺は、急ぎ足で料亭の廊下をで歩いているとオメガのフェロモンのような匂いを感じた。
仕事柄様々なバースの人と関わるため抑制剤を必ず飲んでいた俺はオメガのフェロモンを感じることなんて滅多になかった。
が、今は違った。
ただそれは決して嫌な匂いではなく自分の中の何かが震えたつ香りだった。
部屋に入ると少し明るめな茶色の髪をしたオメガがいた。華奢体つきで幼さは残っているものの、やはりオメガなだけたり"美人"とも取れる容姿だった。だが、俺が惹き付けられたのは容姿ではない。こいつの匂いだ。
俺の目の前にいるこいつは明らかに発情している。が、当人はそれに気づいていない様子だ。フラフラしていて今にも倒れそうだった。
そのオメガが立ち上がった瞬間こちらを向き俺の顔を確認したかと思うと倒れてしまった。
そいつと次に再開したのは出先から会社に戻る途中のことだった。
駅前で何か人がザワついているようで車内から目を向けると見覚えのあるやつが男に肩を掴まれていた。
(フェロモンの匂いがここまで来てやがる、、、何してんだアイツは)
秘書に車を止めてもらいそこへ走って向かった。
(チッ、クソっそいつに触んじゃねーよ。)
一瞬会ったやつのために何故こんなにも必死になっているのかは分からなかったが俺の腹の底から怒りと似たものが湧いてきたのを感じた。
揉め合いになっている2人に近づき俺は男を殴りたい気持ちを抑え、平然を装いアイツの腰を抱き寄せた。そして
「私の連れに何か?」
柄にもないことをしたと思う。
するとこいつは顔だけ俺の方に向けると
「は、橋倉さん、、」
と、驚いた様子で名前を呼んだ。
俺はというと男への怒りが収まらず、無意識に男の手首を握り牽制のフェロモンを出していた。すると男はバツが悪そうに、
「そ、そいつが誘ったんだかんな、、っ。俺は悪くねぇっ、、」
と言い、バッと手を振りほどき走り去っていった。
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