14 / 20

第14話 side哉斗2

行ったか…と思いほっとしたのもつかの間 「はっ、しくらさっ……」 目の前にいるこいつは妙に色っぽい声で俺の名前を呼び、じっと俺のことを見つめる。 特効薬を車内であらかじめ打ってきたからフェロモンには当てられないはずなのだが (やべぇ…勃ちそう…) そんな邪な考えにハッとした俺は事の重大さに気づく。 (こいつの名前…千隼……だっけ?) 俺はまず1番の疑問を聞くことにした。 「千隼といったな?千隼。抑制剤はどうした?なぜ飲んでいない?」 すると千早はキョトンとした顔をして 「……んぇっ?抑制剤ですか?だって俺、発情期来てません。」 そういった。 (は?発情期が来ていないだと?) だが目の前のこいつは間違いなく発情を起こしている。 俺の考えている隙をついて千隼は俺に近づき匂いを嗅いでくる。 (コイツっ……) すると次の瞬間、千隼は俺の腕からずるりと抜け落ち、地面に座り込んでいた。 (また匂いがきつく……っ) どうやら本格的にヒートが来たようだった。 「んっぁっなんか急にあつく、、なっ」 千隼は自分に何が起きたか理解出来ていなかったらしく震えていた。 「はしくらさっ、、、はしくらさん俺っなんかヘンですっ」 (やばいなこれは……特効薬じゃねーと…) (ざわっ) 辺りが騒がしくなり始めた。すると一人の20代らしき女が近ずいてきて、 「どうしました?発情(ヒート)ですか?」 と俺たちに声をかけきた。 「すみません。この子発情を起こしてるようなのですが抑制剤を持っていないと言っていまして、、、」 俺は匂いにあてられるも、理性を保ち答えた。 「交番で特効薬を貰ってきますね。多分抑制剤ではもうあまり効かないかと、、」 「ありがとうございます」 そう答え終え千隼の方に目をやった。 「はぁっはぁ、、はっ、息がぁっ」 千隼は混乱で過呼吸を起こしているようだった。 (やべぇーな。とりあえず落ち着かせねーと…) 「大丈夫だ。落ち着け。」 俺は首に腕を回し千隼の体を起こしながらそう言ったものの千隼の耳には届いていなかったらしく 「はぁっ、、はぁ、はっ、」 と、苦しそうに息をしていて現状は何も変わらない。 考えている余裕はない。 「……悪く思うなよ。」 俺はそうつぶやき唇を奪い抱きしめた。なぜキスなんてしたのかはオレにも分からない。 「んぅっ、、はぁっ」 「大丈夫か?」 俺は平然を装い、そう聞いた。どうやら呼吸は元に戻ったらしく、 「は、はい、、」 と、千隼は答えた。 (はぁ……手を出してしまった…。いやでもこれは仕方なく……、、) … 「んぁっ、、んん、、」 俺が謎の葛藤と戦っているとまた千隼が色っぽい声を漏らす。 「橋倉さっ、、たすけてぇ、、っ」 そう言いながら俺のコートの襟らへんに手を伸ばし、掴んできた。 (…っんとに、こいつはっ…。無自覚なのか?……) 「、、、っちは、、」 俺が千隼に声をかけようとしたのと同時に 「すみません!遅くなりました。」 と言う声が聞こえた。 どうやらさっきの女が戻ってきたらしい。 (理性が…危なかった……。) 俺はその女から特効薬を受け取ると、崩れそうになる理性をなんとか支え 「千隼。袖まくるぞ。もう大丈夫だからな。」 と言い、千隼の頭を撫でた ー。 完全に無意識だった。 腕に特効薬を打つとすぐに千隼は気絶してしまった。

ともだちにシェアしよう!