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王子さまとの出会い
「朝宮さん、あの………」
夕御飯のあと缶ビールを呑みながら片手でスマホを操作し始めた彼に、恐る恐る声を掛けた。
「お風呂に入ってきてもいいよ。疲れているならそのままベッドに横になればいい。シーツは交換してあるから」
雨が酷いから今日はここに泊まっていけばいい。気を遣わなくていいから、そう彼に言われたけど、これ以上見ず知らずの人に甘える訳にはいかないもの。
しっとりと汗の浮いた掌をぎゅっと握り締め、意を決して言葉を続けた。
「優しくして頂いてありがとうございます。その気持ちだけでもありがたいです。雷の音が聞こえなくなったので今日は帰ります」
「……」
彼の動きがピタリと止まった。
「よく聞こえなかったんだけど、もう一回言ってくれるかな?」
不愉快そうに顔をしかめた。
「四季‼」
そして聞こえてきたのは、ぴしゃりと鞭を打つような声だった。
驚いていると、車椅子をぐいと押し戻された。
「就職して一人暮らしをはじめたばかりだからスマホを持ってない。それはさっき聞いたから分かるよ。きみに会いたくても、きみのほうから連絡をしてくれない限り会えないんだ。だから、もっときみと話しがしたいから、泊まっていくように言ったんだけどな。それと……」
そこで言葉を一旦止めると、ひとつため息をついた。
「四季と友だちになりたい。他人行儀は苦手だから、名前で呼んでほしいと頼んだよね?」
「えっと………その………」
痛いところを容赦なくつかれ返す言葉が見付からなかった。反論すら出来なかった。
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