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彼の婚約者

「そんなに見詰められたら恥ずかしいだろ?四季、さっきからすごく気になっているんだけど、それは?」 困ったように苦笑いしながら、トートバックを指差した。 「あ、あの………お弁当……です」 恥ずかしいのは僕の方。 ぎゅっと両手で抱き締めた。穴があったら入りたい。 「朝の分?昼の分?もしかして両方とか?」 彼の瞳が燦々と輝き出した。 「えっと……」 ギャップの違いに面食らいながら「うん」と頷くと、やった!と小さくガッツポーズされてしまった。 結お姉さんが和真は朝御飯は基本食べないの。でも、どこかに遠出する時はサンドイッチを頬張りながら運転するのが好きなのよ。だから、朝はサンドイッチとコーヒー。サンドイッチの具はなんでもO.K.だけどカラシは苦手だから抜いてあげて。コーヒーはブラックは飲めないからミルクだけ入れてあげて。お昼はなんでもO.K.よ。 結お姉さんのアドバイス通りにしただけなのに。こんなにも喜んでもらえて、なんだか僕まで嬉しくなった。 ステンレスボトルはホームセンターの特売品だとは言えないけど……… 「和真さん、月末に初めてのお給料をもらえるんです。だから、ご飯代………」 「それは気にしなくていいって言っただろう?さぁ、乗って」 先にトートバックを後部座席にいれると、助手席のドアを開けてくれた。車椅子を横に寄せ移動しようとしたら、ふわりと体が宙に浮いた。 「和真さん、一人でも乗れます」 「俺の楽しみを奪わないで欲しいな」 ニッコリと優しい微笑みを返され、彼をがっかりさせたくなくて。それ以上はなにも言えなかった。

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