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和真さんの側にいれるしあわせ

「あ、そうだ!」 和真さんが急に何かを思い出したみたいだった。 「ごめんな四季。車椅子を車から下ろすのをすっかり忘れていた。今、取りに行ってくる」 「あ、でも、もうちょっと明るくなってからでも大丈夫です」 「それじゃあ俺がお腹が空き過ぎて死んでしまう」 ぎしっとベッドが軋み、和真さんが大きな欠伸をしながらゆっくりと起き上がった。 「昨日、靖子さんにお願いして来てもらったんだ。靖子さんというのは、ほら前に言ったと思うけれど週一回来てくれるお手伝いさん。足の踏み場もないくらい散らかっていたから、そんな部屋に四季を通すわけにはいかないだろう。だから、大掃除と帰宅したらすぐに夕御飯を食べれるように準備をしてほしいって頼んだんだ」 「え?」 「だって四季とずっと一緒にいたかったから」 彼の言葉に一度はおさまったはずなのに。またドキドキしてきた。 枕元のシェードランプの明かりをつけると、汗をかいたからとシャツを脱ぎはじめた。 「か、和真さん‼」 段々と露になっていく彼の身体に、顔が熱くなるのを感じた。 自分の貧弱な身体とは比べようもない、目の前の均整の取れた身体に思わず目が釘付けになってしまった。 「四季?」 和真さんが眉を上げて()んだ。 「同じ男なんだ。裸なんて見慣れているだろう?」 少し揶揄うように言われても反論すら出来ないほど凝視してしまい、恥ずかしさといたたまれなさで、また顔が耳まで赤くなってしまった。

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