「四季って本当にマメだよね」 お弁当を広げると、きよちゃんがにやにやしながら椅子ごと隣に移動してきた。 「もしかして、朝宮さんにも愛妻弁当作ったの？」 「愛妻･････弁当？」 ｢もう惚けちゃって。四季ってそういうところが天然だよね｣ くすくすと苦笑いされた。 ｢朝宮さんに好意を寄せている女子社員は、今頃どんな顔でお弁当を食べている朝宮さんを見ているんだろうね。私だったら、失恋のショックでしばらく立ち直れないかも｣ ｢僕、そんなに豪勢なお弁当を作ってないよ。彼ね、辛いものは苦手で、唐揚げと、甘めの厚焼き卵が好きなんだって。あとね･･････｣ ｢四季って、朝宮さんの話しをしているときすごく楽しそうだよね？｣ ｢そうかな？｣ ｢そうだよ。朝宮さん、朝宮さんって、聞いているこっちが恥ずかしくなる｣ きよちゃんが呆れ返っていた。 ｢四季くん、エステイトハウスの桝谷さんっていう人から電話だよ｣ 長谷川さんに声を掛けられ受話器に手を伸ばした。 エステイトハウスは今、住んでいるアパートの管理会社。 何だろう･･････ 首を傾げながら電話に出た。 「そんな･････」 にわかには信じられなくて。 受話器を持ったまま呆然となってしまった。