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忍び寄る殺意

「四季、どうした?」 キョロキョロと辺りを見回していたら彼が心配して声を掛けてくれた。 「ずっと誰かに見られているような気がしてならないんです。自意識過剰かも知れませんが」 「そんなことないよ。用心するに越したことはない」 彼と一緒に売り場を巡っていたら、杖をつき右足を引き摺るように歩く40歳前後の女性の姿が目に入ってきた。 「もしかして、知っている人?」 彼に聞かれどきっと心臓が跳ねた。 隠さず彼に正直に話すべきなのか、悩んでいると、 「無理に答えようとしなくていいよ」 いつものように優しく微笑み掛けてくれた。 「あら?」 何を言われるか怖かったけれど、勇気を振り絞って女性のすぐ近くを通った。擦れ違い様女性が振り返って僕をじろじろと見ていたけれど、 「誰だったかしら」 すぐには思い出せないのか首を傾げていた。 一緒に暮らしたのはわずか3ヶ月あまり。 僕の他にも里子が何人もいたから、いちいち顔までは覚えていないのかも知れない。 「行こうか?」 彼が女性をほんの一瞬だけ睨み付けたような気がした。 和真さんの知り合い?そんなまさか。 「構うことないよ」 動揺する僕とは対照的に彼は怖いくらい落ち着いていた。買い物かごを左手で持ち、右手で車椅子を押してくれた。

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