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忍び寄る殺意
すき焼きは年に一回食べれるか、食べれないかのご馳走だった。
スマホでレシピを検索し、白菜の代わりに今が旬の春キャベツを使い、タイムセールで購入した牛肉のこま肉を使いすき焼きを作った。
「あの、和真さん」
喉に引っ掛かってずっと気になっていたことを聞いてみた。
「年も違う、立場だって全然違う。施設を出たばかりでお金もありません。どんなに取り繕っても貧乏です。それに一生車椅子での生活です。それなのに、なんで僕にここまで優しくしてくれるんですか?」
すき焼きを美味しそうに頬張っていた和真さんの箸が止まった。
まずいことを聞いてしまったかと思い、そっと顔を上げると、双眸を甘く細め微笑んでいる彼と目があった。
「四季の言う通り、俺ときみは年も違うし、生まれた場所も育った環境も違う。だからこそ、お互い気付かされることも補い合えることもあるんじゃないかな?俺はきみと出会って毎日新鮮だった。きみは頑張り屋で素直で真っ直ぐで……一緒に暮らそうって言ったのは、もっといろんな話しをしたかったし、きみのことをもっと知りたかったからだ。興味本意からではない。それじゃあ駄目かな?理由にならないかな?」
じっと見つめられた。
「僕じゃ不釣り合いです。和真さんの恋人だなんて言って人前に出たら、あなたに恥をかかせてしまう」
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