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忍び寄る殺意

「俺は四季以外を恋人にする気はない。四季が恋人になってくれさえすれば、ほかにはなにも………」 深みのある柔らかな声が優しく僕の心を包み込む。 「あの和真さん」 今なら話せるような気がする。それでもし彼に嫌われたら、別れを告げてここを出ていけばいいだけのことだもの。 「2年前のこと話したい。副島さんが調べた内容と同じかも知れないけど、ちゃんと自分の口から和真さんに話しがしたい。駄目………ですか?」 「駄目な訳ないよ。俺も兄の話しを四季にちゃんと話さない。そう思っていたから」 「僕がいた養護施設には、夏休みとか週末に里親のもとで過ごす制度があったんです。僕は人見知りが激しくて初対面の人になかなか馴染めないから利用はしていなかったんですが、2年前の6月、集中豪雨で施設が床上まで水に浸ってしまい、修繕が終わるまで里親のひとりの安藤夕貴さん、さっきスーパーで会った女性です。彼女のもとに一時的に預けられたんです。はじめのうちは、夕貴さんも、彼女のご主人の光二さんも優しくしてくれました。でも……」 上唇を噛み締め、スボンの生地をぎゅっと握り締めた。 「光二さんが僕が寝静まったころを見計りベットに潜り込んでくるようになって……逃げられないように車椅子を隠されて………必死で抵抗したけど、夕貴さんは見て見ぬふり。助けてくれなかった。園長にチクったらぶっ殺す。大人しく従えば好きなものをなんでも買ってあげる、なんなら、俺の妻にしてやろうか?お前みたいなバケモノをもらってやるって言ってんだ。ありがたく思え………脅されて、服を脱がされて………その間の記憶が曖昧でよく覚えていないんですが、気付いたら光二さんが頭から血を流し床の上に転がっていたんです。和真さん、僕は自分の身を守るためとはいえ、罪を犯しました。あなたの側にいたいけど、迷惑を掛けてしまう」 あなたを好きになって、はじめての恋をしった。 短い間だったけど、あなたの側にいれただけでもそれだけで十分僕は幸せだった。

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