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忍び寄る殺意
和真さんの袖をぎゅっと握り締め優しい温もりに溢れた腕の中でしばらく泣くのを止められなかった。
それから10分ぐらいは泣き続けただろうか。
僕もようやく泣き止み目尻を拭うと、そっと顔を上げ、和真さんを見つめた。
子どものように縋り泣いてしまった事は恥ずかしいけれど、誰にも言えず胸の奥にずっとしまっていたことを全て話す事が出来てほっとした。
「次は俺が話す番だな」
和真さんが近くにあった椅子を僕の前に持ってきて向かい合うように腰を下ろした。
「どうした?」
「泣いたあとだからきっとみっともない顔をしていると思うんです。だからその……」
あんまり見ないで欲しいな。もぞもぞと腰を揺らすと、
「どんな顔でも俺は好きだよ」クスリと笑われてしまった。
「四季、前に一度、兄がいるって話しをしたと思う。覚えてる?」
「はい」小さく頷いた。
「兄は文武両道、品行方正、絵に描いたような優等生だった。でも、それはあくまで表の顔で」
彼が話し始めた、ちょうどそのタイミングで、テーブルの上に置きっぱなしにしてあった彼のスマホがぶるぶると振動した。
「出なくていいんですか?」
「どうせ姉からだ。あとで掛け直すよ」
「忙しいのにわざわざ掛けてきてくれたんだもの。僕に構わず出て下さい」
「四季がそう言うなら、分かったよ」
手を伸ばしスマホを持ち上げると耳にあてた。
「は?」怪訝そうに顔を顰めると、何やらぶつぶつと独り言を口にしながら椅子から立ち上がった。
「あの、和真さん」
「姉が四季に会いに来てる。女子同士、自分の口から話しをしたいそうだ」
「結お姉さんが?」
「あぁ」
思いがけない事に驚いた。
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