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忍び寄る殺意
「四季くんにどうしても会いたくて。邪魔しに来るなって和真には言われたんだけど、我慢できなくて来ちゃった」
結お姉さんが笑顔で手を振りながら姿を見せた。櫂さんも一緒だ。
「お店は?」
「臨時休業にしちゃった。さっき和真から全部四季に話すからって電話をもらって、気になって何も手につかないんだもの。あら、美味しそうじゃないの。いいなぁ~~」
テーブルの上に置かれたすき焼きを見るなり顔を緩ませた。
「和真、あとで食べるからちゃんと私の分も取っておいてね」
「は?冗談だろう。これは俺のだ」
「独り占めするつもり?ちょっと酷くない」
「そっちがいきなり押し掛けて来たんだろうが」
口喧嘩をはじめたふたり。仲が良くて羨ましい。
「結、和真くん、四季くんが困ってるよ」
櫂さんが持参したトートバックから大きめのタッパーを取り出した。
「チーズケーキ食べれる?」
「はい」
「じゃあ、あとでみんなで食べよう」
櫂さんと少し言葉を交わしただけなのに、彼にムスッとされ睨まれてしまった。
「なんだ一丁前に焼きもちを妬くようになったんだ」
「煩いな」
結お姉さんに痛いところをつかれ、和真さんは真っ赤になりながらぷいっとそっぽを向いた。
「なんだか緊張するね」
「そうですね」
どうしても二人きりになりたいと結お姉さんに頼まれ、普段彼が仕事場として使っている書斎を借りることにした。
「私ね、昔・・・・」
それまで底抜けに明るかった結お姉さんの表情が暗く沈む。
「無理して言わなくてもいいです」
思わず身を乗り出した。
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