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忍び寄る殺意
「いつもおどおどして、人目を気にして下ばかり見ていたきみを遠巻きに見ていたんだよ」
「そうなんですか?全然気が付かなかった」
「顔がみたいな、ずっとそればかり考えていた。だからきみがガラの悪そうな男に絡まれていた時助けに行こうとしていたんだよ。でも」
そこで言葉を止めると、
「四季にずっと聞きたかったんだ。たもくんって誰?友達とは思えないくらいすごく親密そうに見えたんだけど、もしかして四季の好きな子?」
冷ややかな声にどきっとして後ろを振り返った。眉を寄せて険しい表情を浮かべる彼と目が合った。
「たもくんとはそういう関係じゃありません。あの、えっと……たもくんとは同じ施設で育った一つ上の先輩です。僕にとってお兄ちゃんみたいな人です。きよちゃんの彼氏です。えっと、そうだ。二人は同棲してます」
しどろもどろになりながらも懸命に言葉を紡いだ。
「そうなんだ」
ゆっくりと微笑むと、
「じゃあ本当にたもくんとは何でもないんだね?」
念を押す様にもう一回聞かれ「はい」と答えると、
「なら良かった」
ほっとし胸を撫で下ろしていた。
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