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忍び寄る殺意
何をしても全く動かなかったのに、5分もかからずパソコンが起動した。ちょうどそのタイミングでメールが届いて。クリックすると画面いっぱいに表示されたのは、
【イイ気になるなよこの人殺しが。お前みたいなクズ、生きる価値無し】
それを見た武田課長が長谷川さんを鋭い睨み付けた。普段の課長とは全くの別人のようだった。長谷川さんはちらりと横目で課長を見るも顔色ひとつ変えずパソコンに向かっていた。
「大丈夫?」
恐怖でがたがたと震える僕を心配したきよちゃんが車椅子を押し、廊下へと連れ出してくれた。
「あの黒田さん。長谷川さんってどんなひとなんですか?」
今日の出荷数を伝えたあと思いきって聞いてみた。
「なんでまた長谷川さんのことを知りたいの?」
「えっと、その………ほとんど会話がないので、何を話したらいいのか分からなくて」
「なるほどね。長谷川さんは2年前に派遣社員としてうちの会社に来たのよ。あまり他人と関り合いをもうとしないのよ。お昼ごはんも食堂ではなくて車の中で一人で食べていたくらいだから。でも勤務態度は真面目で何度も社員にって話しがあったんだけど断ってきたみたい。それがどういう訳か、昨年の冬、あれほど渋っていた社員の話を突然引き受けたのよ」
「去年の冬……?」
丸和電機の入社試験を受けたのは去年の11月だ。長谷川さんに初めて会ったのは入社式のときだ。
「四季くん大丈夫?」
「すいませんぼぉーとして。あの、黒田さん。忙しいのにありがとうございました」
ペコリと頭を下げた。
「それはそうと、なにかいいことあった?」
にやにやと黒田さんに笑われた。
「何もないです」
慌てて顔を横に振った。
「あらそう?顔に彼氏が出来ましたって書いてあるから。いいわね、若いって。武田課長も彼なら大丈夫だって太鼓判を押しているみたいだし。頑張るのよ」
「く、黒田さん!」
頬が熱い。きっと耳まで真っ赤になってる。
恥ずかしくて身の置き場にほとほと困り果てた。
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