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忍び寄る殺意
「パソコンが起動しなかった。ウイルスがメールに添付されていたって小耳に挟んだんだけど、大丈夫だった?」
迎えに来てくれた彼に抱っこされ助手席に乗せてもらった時にそんなことをいきなり聞かれたら驚いた。
「なんで知ってるんですか?」
「なんでって。丸和電機に武田さんいるよね?」
「はい。生産技術課の課長です」
「彼の兄が営業部の部長をしているんだ」
「そうなんですか」
あ、そういえば確か、オークポリマーの営業に知り合いがいるってさっき話をしていたっけ。
運転席に座りハンドルを握るとちらりとバックミラーに目を向けた。
「和真、さん……?」
「なんで睨まれているのかな?俺、彼女になにかしたのかな?」
彼の言葉にハッとして後ろを振り返った。
長谷川さんが険しい眼差しででじっとこっちを見つめていた。
「あのね和真さん。武田課長のお兄さんから聞いてるかも知れないけど【イイ気になるなよこの人殺しが。お前みたいなクズ、生きる価値無し】そうメールに書いてあった」
ぎゅっと上唇を噛み締めた。
「そうか」
短く答えると静かに車が走り出した。
「あのね、僕のせいで誰かが亡くなっているんじゃないかって。お世話になった弁護士さんの前に国選弁護人が付いてくれたんだけど、やったんだったらさっさと罪を認めて謝れば?少年院に半年も行けばすぐに出てこれるでしょ。きみみたいな子どもの弁護しても金にならないんだよねって鼻で笑われて、全然話しを聞いてくれなかった。約束の時間が過ぎてもなかなか面会に来てくれなくて。20分遅れてやっと来てくれたと思ったらすぐに帰ってしまったんです。3分もいなかっと思います。園長先生が弁護士会に猛抗議して弁護士さんを変えてもらったんです」
「そんな経緯が………知らなかったこととはいえごめんな。また辛いことを思い出させてしまって」
「和真さんが側にいてくれるから。一人じゃないから、大丈夫です」
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