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忍び寄る殺意
マンションの駐車場に着くなり、まずはじめに長谷川さんが何者かを調べよう。彼がそんなことを言いながらスマホを耳にあてた。
『あら和真どうしたの?あ、分かった!四季くんと喧嘩したんでしょう』
結お姉さんの声が聞こえてきた。
「する訳ないだろう。四季とはラブラブだ。今も隣にいるし、手だってほら握ってる」
大きな手で包む込むようにそっと握ってくれた。
『あらあら惚気ちゃって。ご馳走さま。用がないなら切るわよ』
「ちょっと待って。切るなよ。雄士 さんに折り入って頼みがあるって伝えてくれないかな?」
『自分で連絡した方が早いんじゃないの?』
「俺が苦手なの分かってるだろう」
『はい、はい、そうだったわね。伝えておくわ。あと、ついでに和真が結婚を前提に同棲をはじめた子がいるって伝えておくわね』
「姉さんそれだけはーー」
彼が止める間もなく一方的に電話が切られてしまった。
「それこそ余計なお世話だ」
スマホを握り締めたままがっくりと肩を落としていた。
「あの和真さん、雄士さんって?」
「フルネームは眞山雄士 。従兄弟だ。色んな職を転々として、今は、結婚相談所で結婚カウンセラーをしている。姉と性格がまったく同じなんだ。断わっても見合い話を次から次に持ってくるんだ」
はぁーと深いため息をついた。
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