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忍び寄る殺意
「へ~え、小学校が目の前にあるんだ」
窓から見える校庭ではリトルリーグの野球の試合が行われていた。和真さんはそれを熱心に眺めていた。
きよちゃんとたもくん以外の、しかも大好きな彼が自分の家にいるのがいまだに信じられなくて。心臓がドキドキして、今にも破裂しそうだった。
「何もなくてびっくりしたでしょう。手持ちのお金があまりないから布団と冷蔵庫だけあればなんとか1ヶ月は生活出来るかなって思ったんだ。あとはお給料をもらったら洗濯機とかテレビとか、少しずつ買い足していこうかなって」
「高校を卒業して、そのままいきなり社会に出されるだ。その日暮らすだけで手いっぱいのはずだ。よく頑張ってきた。偉いよ」
アパートを退去するのにあたり、彼とふたりで手分けして部屋の隅から隅まで掃除をした。荷物は彼が手配してくれた専門の業者さんがものの30分もかからず運び出してくれて。引っ越しはあっという間に完了した。
あとはエステイトハウスの桝谷さんに立ち会ってもらい鍵を返せば終わりだ。
「桝谷さん遅いな」
約束した時間を過ぎても桝谷さんがなかなか現れなくて。彼がその辺を見てくる。そう言って部屋を出ていった。
それから数分後。
「ん?」
何かが燃えているような焦げ臭いが流れ込んできた。
「っ……ゴホっ……」
息が苦しくて口を手で押さえ激しく噎せ込んだ。
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