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忍び寄る殺意

「……かずま……さん 」 炎が激しく燃える音が聞こえる。 苦しさのあまり咳を何度も繰り返してから、ようやく彼の名前を呼べた。 「犯人に疑われて大変だったんだ。ごめんな、遅くなって。 水はかけたから、早く逃げよう」 (水……?) 言われてみれば髪や服が濡れている。 壁材をものの数秒で燃やし尽くした炎がいまにも僕たちを飲み込もうとしていた。 「こんな状況で言うことじゃないけど、10月10日に市民庭園で結婚式を挙げることに決まった。四季、俺のお嫁さんになってくれる?」 面食らいながらも「はい」小さく頷くと、 「俺がきみの心に絶対に虹をかけてやるから!何があっても一緒だ!」 そう叫ぶや否や火の粉が振る中、僕を抱き上げたままベランダを飛び越えた。 その直後ガシャーンと大きな音がして。彼の首にしがみついたまま後ろを振り返ると、窓から真っ赤な炎が噴き出していた。あと数秒遅かったら間違いなく 逃げ遅れていた。 救急車にそのまま運んでくれたことまでは覚えているけど、目が覚めると病院のベットの上だった。 最初に視界に入ってきたのは目蓋を真っ赤に腫らし僕の手を握る彼の姿だった。 「あ……」 声を掛けようとしたけど喉が痛くて声が出なかった。 「かなりの量の煙を吸い込んだみたいだ。喋れるまで2日くらいかかるだろうって。良かった無事で」 彼が涙を堪えながら頭を撫でてくれた。 「関係者以外面会謝絶です」 「私は姉よ」 結お姉さんの声が廊下から聞こえてきた。 「四季、少し待ってて」 和真さんがすっと立ち上がり扉に向かった。それからしばらく経過してから結お姉さんと櫂さんが病室に入ってきた。

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