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忍び寄る殺意
「良かった無事で」
結お姉さんが大粒の涙を流しながらぎゅっと抱き締めてくれた。
(結お姉さん、ごめんなさい心配掛けて。いま、声が出ないの)
袖にしがみつき顔を見つめることしか出来なかった。
「引っ越しで疲れている四季に夕御飯を作ってもらうのは申し訳ない。鍵を返すだけだから、それが済んだらご飯を食べに行くって和真くんから連絡をもらって準備していたら、消防車と救急車のサイレンが聞こえてきて、嫌な予感がしたんだ。和真くんのスマホに連絡しても全然繋がらないし。やっと繋がったと思ったら四季くんが火災に巻き込まれて緊急搬送されたと聞かされて愕然とした。生きた心地がしなかった」
櫂さんが胸に手を当てて安堵のため息をついていた。
(結お姉さんも櫂さんもありがとう。僕はこの通り元気だからもう心配しないで)
声が出ないのが歯痒くてもどかしい。
身ぶり手振りどうにかして伝えようとしていたら彼がメモ帳とペンを寄越してくれた。ありがとう和真さん。ペンを握ろうとしたら、トントンと扉をノックする音が聞こえてきた。
「彼の心の傷はまだ癒えていない。あなた方警察に対して今だ不信感が拭いきれていない。申し訳ありませんが弁護士を通してくださいとお願いしましたよね?」
ずかずかと遠慮なしに病室に入ってきた二人の刑事を彼や櫂さんが睨み付けた。
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