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忍び寄る殺意
彼の話しでは、ハンドルネームKという人物が管理する闇サイトがあって、僕に恨みを持つ人を募り、その恨みを高値で買い取っているみたいだった。
逆恨みとはいえほっとくわけにもいかない。事は急を要するからと彼がすぐに弁護士に連絡をしてくれた。
「もうこんな時間か」
彼が背凭れに掛けていた上着を手に取った。
「面会時間は8時までなんだ。四季にずっと付き添っていたんだけど、ごめんな」
にっこりと笑 むと頭を優しく撫でてくれた。
『和真さん帰らないで。一人は嫌だ』
大好きなひとの手が離れていってしまう寂しさに、とっさに腕を掴んでいた。
「和真、ダメ元でナースステーションに聞いてこようか?」
「姉さんまだいたの?」
「だって四季くんが心配で。扉の前に立ってる警察官。ご苦労様って声を掛けたのに無視よ。それどころか睨んでくるし。そんな人と一晩中いたくないよ。いくら扉一枚隔ててるとはいえ鍵が掛からないのよ。何されるか分からないもの」
結お姉さんが櫂さんを連れてナースステーションへわざわざ 頼みに行ってくれた。
「先生の許可が下りたみたいだ。お邪魔だから寄らないで真っ直ぐ帰るって。姉さんらしい」
クスッと笑ってメールの内容を見せてくれた。
「よし寝るか」
彼がそのままごそごそと布団に潜り込んできたから慌てた。
「だって四季の寝顔、誰にも見せたくない」
逞しい腕が腰に回ってきてそのまま抱き寄せられた。
「というか俺が寝れないだけなんだけどね」
悪戯っぽい笑みを浮かべると、おでこに軽くちゅっとキスをされた。
「か、か、和真さん!」
ゆでたこみたいに真っ赤になって言葉を返したら、
「良かった。声が出るようになって」
嬉しそうに破顔するとぎゅっと力を込めて抱き締められた。
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