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忍び寄る殺意
「長澤四季、現住建造物等放火罪で逮捕状が出た。署まで同行願いたい」
昨日来た刑事の声だ。
「四季は何もしていない」
彼がむくっと起き上がり、感情を押さえた低い声で返した。
「写真の男が犯人なのでは?」
「目撃者がいたんだよ。ソイツが玄関に液体を撒いて火を付けたところを見ていた人がいたんだよ。かわいそうだとみんなに思われる為の自作自演だ。寝たふりしてねぇでさっさと起きろ!車椅子にとっとと乗れ!」
病院から借りている車椅子を足で蹴りベットにぶつけてきた。
車椅子は僕にとって身体の一部。大事な相棒だ。
中学校に入学した年にNPO法人から贈られた大人用の車椅子。苦楽を共に乗り越えてきた相棒だった。その相棒を失い失意のどん底にいるのに。自作自演で火を付けるなどあり得ない。でっち上げだ。
外に出ようとも布団の中でぞもぞしていたら誰かが息を切らし駆け込んできた。
「これは、不当逮捕だ」
「てメェは誰だ」
「弁護士の斉藤だ」
「あ?弁護士だと」
刑事の声色が変わった。
「逮捕状は?あるなら被疑者に見せてください。逮捕の理由は?被疑者はこの通り足が不自由です。逃げたり証拠を隠したり、壊したり出来ない。逮捕の必要性がないのは明白。違いますか?」
畳み掛けるように質問を投げ掛けた。
くそ、吐き捨てると刑事が近くにあった丸椅子を足で蹴り飛ばし病室を出ていった。
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