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忍び寄る殺意
目には見えぬ血だまりに、恐ろしくて寒くなり身体が震えだした。
「僕が愛するひとは、みな僕のもとからいなくなってしまう。彼じゃなく、僕が死ぬべきだった」
「四季?」
彼の肩に隠れてちらっとしか見えなかったけど、全身黒づくめの男性だった。
「和真さん、あの人、僕知ってる」
何かに取りつかれたように、視線が宙をさ迷う。
「このクソガキ・・・・お前さえいなければ、お前が余計なことを喋らなければ、バスの運転手の過失で俺は無罪放免だったのに。覚えておけよ、必ずお前をぶっ殺してやる・・・・・箱みたいな、なんていうんだろう。四方形の部屋で彼が大声を出していた。小さい頃の記憶なんてほとんど覚えていないのに。なんで今頃・・・・・12年も前のことを思い出したんだろう」
「四季もういいよ。頼むからもう思い出さないでいいよ」
なぜか彼が泣いていた。
「和真くん、車を急いで出せ。四季くんの精神《こころ》が持たない」
「和真、急いで!警察が来たら更にややこしくなるから」
櫂さんと結お姉さんに急かされ、トランクに車椅子を大急いで乗せると、慌てて運転手席に乗り込んだ。
「あとで連絡する」
「四季くんには和真くんしかいないんだ。ちゃんと守るんだぞ」
「そうだよ和真」
「分かってる」
涙を手の甲で拭うとハンドルを握りアクセルを踏み込んだ。
「2日だけ姿を消そう」
「和真さん?」
きょとんと首を傾げて彼の横顔を見上げると、
「駆け落ちの予行練習を今のうちにしておかないとな。それに、黒幕が誰か分からないんだ。今は動くべきじゃない。大丈夫だ、俺がずっときみの側にいる。だから安心しろ」
にっこりと微笑むと、すーと手が伸びてきて頭を撫でてくれた。
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