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いつかきっと笑ってくれますか

その時電話が鳴り出した。 「誰からだ?」 「FAXみたい」 「連川さんかな?連川っていうのはお隣さんだ。年一回旅行に行くのに、ご近所さんみんなで毎月積立てをしているんだ。今度行く旅行の行程表をFAXで送るって連絡があったんだ。ん?どうした?」 何枚も送信されてきたものを一目見た瞬間お婆ちゃんが愕然となった。それにすぐに気付いたお爺ちゃんと彼がすっと立ち上がってお婆ちゃんの手元を覗き込んだ。 「こんなことをして。よっぽど暇なんだな」 「自宅だけじゃなくて、なんで固定電話の番号まで知ってるんだ」 彼が悔しさを滲ませ、紙をくしゃくしゃと手で丸めた。 「お爺ちゃん携帯が鳴ってます」 テーブルの上に置いてあったスマホを渡した。 「ありがとう四季くん」 電話の相手はお隣の連川さんからだった。 「なんだって?」 お爺ちゃんの声が驚きのあまり裏返ったのが分かった。 「あなた?」 「ご近所さんみんなのところに今朝から昼に掛けて匿名の電話があったそうだ。一宮の孫の嫁は殺人犯だ。指名手配犯だってな。その証拠に警察が訪ねてきたって。連川さんはたちの悪い悪戯だ。鵜呑みにしないようにって、みんなに説明してくれてみたいだ」 「たちの悪い悪戯ってレベルじゃない」 「そうよ。四季くんが何をしたっていうの」 ごめんなさい和真さん。 お爺ちゃん、お婆ちゃん。 僕と関わったせいで、みんなを不幸にしてしまう。 僕がいなくなれば……そうだよ。最初からそうすれば良かったんだ。 ハンドリムに手を置いてゆっくりと前へ進もうとしたら、 「四季、駄目だ」 彼が両手を広げて前に立ち塞がった。

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