115 / 588

いつかきっと笑ってくれますか

「大丈夫?」 「……」 すぐに答えることが出来なくて。彼の顔を見上げると、 「やっぱり明日は会社を休んだ方がいい」 片手でお湯を掬い肩にかけてくれた。 「みんなに迷惑を掛けるのは百も承知です。でも僕はなにも悪いことはしていません。2年前は頼る人もいなくて一人だったから怖かったけど、今は違う。和真さんも結お姉さんも櫂さんも副島さんも、それに……か、和真さん」 ふいに背中に彼の腕が回ってきて。 気付いたときには逞しい胸元へと抱き寄せられていた。 首筋に熱い息がかかり、思わず身体を強ばらせると、 「まだ怖い?」 囁くような声が聞こえてきた。 僕は俯いたまま、ぎゅっと目を瞑ったまま頭を振った。 「怖くないです。恥ずかしいだけで……」 「昨日も一緒に入ったのに?」 「昨日は、昨日です。僕だけ、さっきからドキドキが止まらなくて」 耳の奥で響く心臓の音。 彼は落ち着いているのにと思うと、自分だけ慣れていないことを思い知らされるようで恥ずかしい。 実際慣れていないんだけど…… さっと手を取られ、彼の胸に押し当てられた。 「四季だけじゃないよ。俺だってほらこの通りドキドキしてる」 息を詰めると、掌に鼓動が伝わってくる。 僕のものほど大きくないけれど、少し速い……ような気もする。 「和真さん」 見つめ返すと、 「大好きな人と一緒に風呂に入っているんだ。ドキドキしない訳がない」 優しく微笑んだ。 「副島から口止めされていたから言わなかったけど」 彼から知らされた事実に愕然となった。

ともだちにシェアしよう!