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いつかきっと笑ってくれますか

「新婚さんに野暮なことを聞いたら可哀想だろう」 斎藤さんが助け船を出してくれた。 「朝宮はあぁ見えて、かなりの焼きもち妬きだ。新妻に悪い虫が寄ってこないようにしたんだよ。いちいち聞かなくても分かるだろう」 「斎藤さん、お願いだからそれ以上は……」 蚊の鳴くような声で返した。 恥ずかしくてしばらくの間、顔を上げることが出来なかった。 カフェから会社までは歩いて15分くらいの距離。パトロール中のパトカーが何台も脇を通り過ぎていった。斎藤さんがカメラを手にし、路上駐車している車のナンバーを撮影していた。テレビ局の車も何台もあった。 「どこに黒幕が潜んでいるかわからないんだ。野次馬も念のため撮影しておいた」 「斎藤、正面から行くのか?」 「当たり前だ。四季はなにも悪いことをしていないんだ。正々堂々と出勤してなにが悪い」 「斎藤さん、吉村さん」 ひとでごった返す駐車場をちらっと見た瞬間気持ち悪くなって服をぎゅっと手で掴んだ。 「心配しなくても大丈夫だ。四季くんには俺たちが付いているから安心しろ」 「ここにいるのは人じゃない。案山子だと思えばいいんだ」 ふたりに励まされ大きく頷いた。 オークポリマーにも取材陣が殺到していて大変なことになっているって副島さんが話していた。 彼も頑張っているんだもの。 僕も自分が出来ることをする。 深呼吸をしてから真っ直ぐ前を向き駐車場を横切り出勤した。

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