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いつかきっと笑ってくれますか
斎藤さんと吉村さんにカフェまで送ってもらった。
「あら随分と早いわね」
「うん。あのね、結お姉さん……」
「どうしたの四季くん。何があったの?」
笑顔で出迎えてくれた結お姉さんの顔を見るなり涙が堰を切ったかのように一気に溢れ出た。
「私たちが代わりに話します」
葬式ごっこやロッカーを荒らされていたこと、これ以上同僚に迷惑を掛けるわけにはいかないから会社に辞表を出したことを斎藤さんと吉村さんが話してくれた。
「櫂さん、そんなに警戒しなくても」
「用心することに越したことはない」
警察署に向かった斎藤さんと吉村さんを見送ると、【本日臨時休業日】のプレートを外のドアノブに掛け施錠した。
「でもまさか丸和電機の関係者が黒幕とはな……」
「私の可愛い《《妹》》をいじめて何が楽しんだか」
「結、四季くんは男の子だよ」
「戸籍上は女の子よ」
結お姉さんに手をぎゅっと握り締められた。
「副島から洗いざらい全部聞いたわ。びっくり仰天してしばらく口が利けなかったのよ。口ではなんだかんだ言ってるけど副島は四季くんのことを誰よりも一番大事に想ってる」
「和真くんも言ってたよ。どんなに頑張っても副島には敵わないって」
櫂さんが段ボールをカウンターの奥にしまうと冷たい飲み物を持ってきてくれた。
「残る心配事といえば和真くんの父親だ。四季くんとの結婚を快く認めてくればいいんだが、一筋縄ではいかないかも知れないな」
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