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いつかきっと笑ってくれますか

「どう考えても男の嫁なんてあり得ないもの。絶対に……」 反対されるに決まってる。最後まで言い終わらないうちにピンポーンと呼び鈴が鳴った。 「誰だろう」 櫂さんが不安げにドアを見つめた。 「納品の業者さんかも知れないよ」 「尚更居留守を使うわけにはいかないか」 チェーンを付けたままドアを少しだけ開けた。 「どちら様ですか?」 「四季くんの同僚の橋本です。幼馴染みです。忘れ物を届けて欲しいって常務に頼まれて」 「そうですか。本人に確認を取りますので少しお待ちください」 櫂さんがドアを一旦閉めた。 「知り合いに間違いない?」 「きよちゃんの声に間違いありません」 「そう。それにしてもなんでここが分かったのかな?」 「四季くんのあとを追いかけてきたんじゃないの?」 「本当にそうかな?」 不思議そうに首を傾げながら、今度はチェーンを外しドアを開けた。 「お洒落ですっごく素敵なお店ですね」 身を乗り出し店内をキョロキョロと見回すきょちゃんを櫂さんは怪訝そうに見ていた。 「四季くん、これ常務からだよ。なんかお呼びじゃない雰囲気だよね」 紙袋を膝の上に置くと、仕事に戻らなきゃと言いながら、そそくさと帰っていった。 ごめんねきよちゃん。疑ったりして。 心のなかで何度も謝った。

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