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暗黒沈静
「四季くん電話じゃないの?」
お婆ちゃんに言われスマホの画面を覗くとたもくんからだった。
「和真から?」
「いいえ、友だちからです」
「あらそうなの」
お婆ちゃんががっかりしていた。
「ごめんなさい」
「四季くんは悪くないんだもの。謝らないで。友だちを待たせると悪いから早く出てあげて」
「はい」大きく頷いてスマホを耳にあてた。
『武田課長から四季が会社を辞めたって聞いてびっくりした。ひと言くらい言って欲しかった』
「ごめんなさい。会社や同僚のみんなに迷惑を掛けたくなかったから、辞めることにしたんだ」
『そうか。なんか四季らしいな。武田課長が寿退社だって話していたけど、相手はもちろん朝宮さんだよな』
「そうだけど……たもくん、怒ってる?」
『なんで?』
だって声がとげとげしいから。そう答えようとしたら、
『折り入って話があるんだ。ふたりきりで会いたい。そこの住所を教えてくれないかな?』
たもくんどうしちゃったんだろう。
いつものたもくんじゃない。
「きよちゃんと喧嘩でもしたの?あれ?」
長い指が音もなく伸びてきて。すっと静かにスマホを持っていかれた。どきっとして上を見上げると、和真さんがむすっとしながらスマホの画面を覗き込んでいた。
もしかして怒ってる?
でもなんで?気にさわるようなことしたかな。
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