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暗黒沈静
『四季どうした?大丈夫か?』
「岩水保さん、朝宮です。私の妻にどういったご用でしょうか?」
怒気を孕んだ低い声でゆっくりと話し始める彼。
「ちょうど良かった。貴方とは一度膝を割って話がしたいと思っていたんですよ。電話をする手間が省けました。明日、そちらの会社に打合せで行くことになっているんです。その時少しお話をさせて頂いても宜しいですか?」
『その、妻って……』
「式を挙げる前に婚姻届を先に役所に出す予定です。何か不都合でも?あぁ、もしかして、貴方もきよちゃんと結婚されるんですか?それはおめでとうございます。もし、後見人が必要なら四季の夫として喜んで引き受けさせて頂きますが」
『……』
たもくんは何も答えず電話を切ったみたいだった。
「あら~~和真が焼きもち妬いてる」
お婆ちゃんが嬉しそうにニコニコ笑って両手をぱんと叩いた。
「和真、婚姻届って」
「あとは四季が記入するだけになっている。後見人は副島の父親が二つ返事で引き受けてくれた。だから、はったりでも何でもない」
「そうか良かった」
お爺ちゃんが胸を撫で下ろしていた。
「もう心配性なんだから」
「だってそうだろう。四季くんが一回りも年上の和真の嫁になってくれるなんて、夢じゃないかって何度思ったことか」
「あら?あなたもなの?実をいうと私もなの」
お爺ちゃんとお婆ちゃんが顔を見合わせるなりぷぷと笑いだした。
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