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暗黒沈静
『もうやぁだ、そんなにたいしたことじゃないのに。みんな心配し過ぎなんだもの』
結お姉さんに謝りたい一心ですぐに電話をすると普段と変わらない明るい声が返ってきた。
「……結お姉さん……本当にごめんなさい」
『だからもう謝らないで。四季くんを泣かせたら副島に怒られるから。和真よりめっちゃ怖いんだよ。マジで人格が変わるんだからね』
「和真さんも同じことを言ってた。あの結お姉さん……」
『長谷川さんだっけ?四季くんの同僚のひと。彼女は犯人じゃない。たまたま通り掛かったときに防犯カメラに写っただけだよ』
「もう訳が分からなくて。どうしていいのか分からなくて」
首を横に振りながらスマホをぎゅっと強く握り締めた。
『あのね四季くん……ちょっと私のスマホを返してよ‼』
結お姉さんの他に誰かいるみたいだった。
『四季』
受話器から聞こえてきたのは櫂さんの声ではなくて副島さんの声だった。
『長谷川さんは犯人にハメられたんだ。助けを求めるためお前に連絡を寄越したんだ。また連絡があるかも知れない。そのときは余計なことは喋らず、斎藤の携帯番号を教えろ。いいな』
『ちょっと副島。もう少し優しい言い方出来ないの?』
『なんでいちいち優しくしないといけいんだ』
結お姉さんと副島さんが口喧嘩をはじめた。
『ごめんね四季くん、賑やかで。斎藤弁護士の番号は和真くんに聞いてね。それじゃ切るよ』
「櫂さん待ってください。電話を切らないで。結お姉さん、櫂さんをがっかりさせたくなくて、だから安定期に入るまで内緒だったんです。悪気があった訳じゃないんです。えっと、その……」
『分かってるよ。四季くんありがとう』
櫂さんが静かに電話を切った。
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