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暗黒沈静
それから二日後。
僕は彼とともに、両親が眠っている県境に近い山あいの町にある墓地を訪ねていた。
緑と優しい色合いの花が咲き、静かでとても落ち着きのある場所だ。
交通が不便で、車椅子で訪れるのがなかなか大変で、ここ一年は墓参りすら出来ずにいた。
「和真さん、この木だよ」
境内にはご神木に相応しい樹齢二百年を越えるしだれ桜の大木がある。
「長谷川さんはなんの為にここに来たんだろうね」
辺りをぐるりと見回した。
吉村さんが執念で長谷川さんのSNSのアカウントを探しだし、昨日公開された写真を彼に送信してくれた。
そこに写りこんでいたのは両親が眠るお寺の境内にあるこの桜の大木だった。
道幅が狭くでこぼこで、車輪を取られなかなか前に進まなくて苦労していたら彼が横に抱き上げてくれた。
「景色が綺麗ね」
「静かでいいところだな」
来る途中で買った花を抱えたお婆ちゃんと、バケツとひしゃくを持ったお爺ちゃんが僕たちの後ろをついて歩いていた。
僕の両親にどうしても挨拶がしたいとお爺ちゃんとお婆ちゃんに押し切られ、副島さんが急いでファミリーカーを手配してくれた。
車椅子を邪魔にならないところにお婆ちゃんが移動してくれた。
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