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暗黒沈黙
赤の他人で余所者の僕たちに優しく接してしてくれる町の人たちに少しでも恩返しになれば。そう思いながらお握りをひとつずつ真心を込めて握った。
何気に視線を感じて後ろを振り返ると彼と目が合った。
にっこりと微笑みながら手を振られ、頬を赤らめ手を振った。薄手のビニール手袋をはめたままだったけどすっかり忘れていた。
「もしかしてお兄さんじゃなかったの?」
女将さんが目をぱちくりしていた。
「実は孫の婚約者なんです」
「あら~そうなんですね。随分と仲のいい兄弟だって思っていたけど、それはそれはおめでとうございます」
「孫には勿体ないくらいいい子なんですよ」
お婆ちゃんと女将さんの視線が僕に向けられた。何だろうすごく嫌な予感がする。
「彼のどこに惹かれたの?」
「お婆ちゃんも知りたいな」
「えっと…その…それは…」
お婆ちゃんと女将さんから容赦ない質問責めにあい、逃げるにも逃げられなくなってしまった。たじたじになりながら、目で彼に助けを求めた。
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