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温かな人たちに救われる心

うすい青空が高く晴れ渡り、そこへ羽毛をプッと吹き散らしたように、軽い綿雲が一面に浮いていた。 悠然と流れる大川の河川敷。 ゲートボールをのんびりと楽しんでいたお年寄りたちや、サイクリングロードを散歩していた町民が足を止め固唾をのんで捜索隊を見守っていた。 彼もお爺ちゃんもライフジャケットを着て、捜索隊と一緒にボートに乗り込み水上から初瀬川さんに繋がる手掛かりを見付けようと懸命に捜索を続けていた。 空からの捜索は三機のドローン。 町内で写真館を経営する男性が仲間に声を掛けてくれて。皆さん二つ返事で快く引き受けてくれた。 正直まだ他人(ひと)が怖い。 目もちゃんと見ることが出来ない。 笑ってもどうしても顔がひきつって固くなってしまう。 心もカチカチに凍ったままだ。 「ほんの僅かな手掛かりでも見付かると良いわね」 民宿の女将さんが様子を見に来てくれた。 「あなたがバス事故で亡くなった長澤ご夫妻の息子さんだって修恩寺のご住職から聞いたわ。もう水くさいんだから。そうならそうだって言ってくれればいいのに。どうりで会ったことがあると思ったのよ」 「すみません」 頭をぺこっと下げた。 「あの失礼ですが……」 お婆ちゃんが怪訝そうな表情を浮かべた。 「あなたは幼くて私のことを覚えていないと思う。事故が起こった直後、主人と現場に駆け付けたの。そのとき見た光景はまさに地獄絵図だった。13年経過しても決して忘れることが出来ない。今も脳裏に焼き付いてるわ。あなたは、まわりの大人たちに眠っちゃ駄目。一緒にお家に帰ろうって体を揺さぶり懸命に声を掛けていたのよ。迫り来る火にも怯まず、足に大怪我を負いながらも……まさかこんな形であの時の子どもに再会するとはね。もう、やぁね」 女将さんがハンカチで目元を押さえた。

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