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温かな人たちに救われる心

「ごめんなさい。助けてもらったのに何も覚えていなくて。本当にすみません」 悔しくて仕方がなかった。不甲斐ない自分に無性に腹が立った。 「助けてもらったのは私たちの方よ。ありがとう」 頭を下げられ慌てた。本当は僕が下げないといけないのに。 「女将さん頭を上げてください」 お婆ちゃんが女将さんの肩にそっと手を置いた。 「失礼ですけどご主人は?」 「迎さん……えっと迎さんっていうのは写真館の社長ね。右隣にいるのが私の主人よ。13年前は消防団の団長だったの。今はこの町の町長を務めているわ」 「え?そうなんですか」 予想もしていない答えが返ってきたから、お婆ちゃんとふたりして驚いた。 「主人ね、まここころの会が公安委員会に苦情を申し立てたってどこからか聞いてきたのよ。命を顧みず乗客を懸命に助けようとしていたあの子どもがそんな人殺しなんて出来るわけない。何かの間違いだって。私もそう思う。長澤さん、一宮さん、私たち夫婦は何があってもあなた方の味方ですから」 女将さんが大きく頷き、にこっと優しく微笑みかけてくれた。

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