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温かな人たちに救われる心

「……お金……」 「ん?」 「お金が欲しい訳じゃないのに、なんで……」 わなわなと震える手で服をぎゅっと握り締めた。 「四季……」 彼が隣に移動してきて、手を静かに握ってくれた。 封筒には墓前に供えて欲しい。これで許してもらおうなんて思っていないから。 メモと共に帯が巻かれたお金の束がふたつ入っていた。 その額は、金を払うから告訴を取り下げて欲しいと初瀬川さんのお兄さんが弁護士さんに渡した額と同じだった。あのとき、弁護士さんは受け取らずすぐに返し、初瀬川さんのお兄さんと、上司、署長らを告訴した。 「話したくないなら無理しなくても大丈夫だよ」 彼の大きな手が頭を撫でてくれた。 「和解金とか、慰謝料とか、お金をたくさんもらったんでしょう?羨ましい。少しくらい分けてよ。本当はお前がやったんじゃないか?自作自演じゃないのか?弁護士さんのもとに連日連夜電話が殺到して大変だったみたい。でも僕は一銭ももらってない。もう二度と初瀬川さんや警察と関り合いを持ちたくなかったから、全部断ったのに。なんで……」 「副島と斎藤にどうするか相談しよう。女将さんが丹精込めて作ってくれたんだ。冷めるまえに食べよう」 ちゅっと軽くおでこに口付けされた。 「ご飯食べたら一緒にお風呂に入ろう」 うん、伏し目がちに頷くと、今度は頬っぺにキスをされた。

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