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焼きもちを妬いてばかりの彼
副島さんがそんな風に僕を思っていてくれていたなんて。嫌われていると思っていたから涙が出るくらい嬉しかった。でも当の本人は、
「は?いつそんなことを言った?言った覚えはない」
相変わらず素っ気なかった。
『長谷川さん、無事だよ。四季の想いちゃんと届いているよ』
「ありがとう結お姉さん」
スマホをぎゅっと握り締めた。
『あ、そうだ。副島から聞いた?たいへんだったみたいだよ』
「あの、何がですか?」
『和真と岩水さんだっけ?四季くんの元カレ。1時間以上一切喋らず睨み合っていたんだって。岩水さんが和真に何かを言ったみたいで、それで和真が岩水さんの胸倉に掴み掛かろうとしたんだけど、副島が止めに入ったみたいだよ。いいよね~~四季くんモテモテじゃん』
「結お姉さん、たもくんとはそういう関係じゃなんです。たもくんには同棲中の彼女が います。第一たもくんが好きなのは女の子の方で……」
『あら、そうなの?私が聞いた話しだと』
「姉さん、それ以上は禁句。四季、俺の前でソイツの名前を二度と出すな」
彼がむっとした顔つきで、スマホに手を伸ばすと、ぶちっと一方的に切ってしまった。
「四季、あとでちゃんと和真に分かりやすく説明してやれよ」
副島さんはやれやれとため息をつきながら、苦笑いを浮かべていた。
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