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焼きもちを妬いてばかりの彼
「あっ、そうだ」
すっかり忘れていたことを思い出し、思わず声を上げてしまった。
「何か思い出した?」
「ううん、なんでもない」
慌てて首を横に振った。
よりによってこのタイミングで思い出すなんて。最悪だ。彼に知られたら間違いなく焼きもちを妬かれる。
「自分から墓穴を掘ってどうするんだ」
副島さんに言われ、はっとして顔を上げるとムスッとして唇を真一文字に結ぶ彼と目が合った。
「思ったことが表情に出るからすぐ分かるんだ。岩水に思わせ振りな態度を取るから、変に誤解され、面倒なことになるんだろう。これからは気を付けろ。和真も、そうやってすぐに焼きもちを妬かない。もう少し大人になれ」
「やっぱり一発殴っておけば良かった」
「あのな……」
副島さんもこれにはほとほと困り果てて、苦笑いするしかなかった。
【誰ももらってくれないなら、俺が四季をもらってやる。あと、4年……四季が18才になって誰とも付き合ってなかったから……絶対忘れるな。約束だからな】
通学カバンの中にたもくんからの手紙が入っていたんだっけ。たもくんかがきよちゃんと付き合う1ヶ月前のことだ。
肝心な部分をどうしても思い出すことが出来なかった。
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