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暗澹

「警察署から連絡があって、被疑者が逃亡、証拠隠滅の恐れがあるから、速やかに告訴状を受理し、しらさぎの丘児童養護施設の園長・円谷幸一の逮捕状を裁判所に請求したそうだ。詐欺罪で逮捕し、それから3人の行方不明に関わっていないか捜査するそうだ」 「きよちゃんからも初瀬川さんからも黒田さんからも連絡がないって副島さんが。僕の代わりに、必ず助けるからってメッセージを送り続けてくれているみたいだけど……」 上唇を噛み締め、スボンの生地をぎゅっと握り締めた。 「みんな無事だ。生きてるよ」 彼が僕の前に膝を立てて座ると、両手で包み込むようにそっと握ってくれた。 「大丈夫…じゃないよな。園長先生のこと信じたい気持ちは分かる。でも、三人の命が掛かっているんだ」 心中穏やかではない僕を気遣うように優しく声を掛けてくれた。 「まずは人命最優先だって、副島さんと斎藤さんにも言われたら。大丈夫だよ。ありがとう和真さん」 正直まだ、動揺している。 彼や隆之さんから聞いたことが、まだ頭のなかでぐるぐるしている。

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